第2回目は鎌倉Romi-Unie Confitureの店長を務めているまきこちゃんのお話をお届けします。
romi-unieにはどんな仕事があって、どんなスタッフがどんな思いで働いているのか、お店の裏側にあるスタッフと働き方のお話です。romi-unieはほぼ100%女子という会社でもあるので、仕事を始めたばかりのスタッフからベテランまでいろんな立場での働き方もご紹介できたらと思っています。
まきこちゃんとは
学生時代、スタージュでromi-unieのアトリエに入り、その後、新卒で入社しました。あれから17年。現在はRomi-Unie Confitureの店長として、お店づくりと30人を超えるスタッフのシフト作成、製造数の管理などの管理業務を担っています。社内・外部イベントのとりまとめ役、POP&ポスター制作では文字やイラスト職人としても活躍。昨年からは広報と『romi-unie JOURNAL』の制作を引き継ぎ新たな活動にもチャレンジ中です。
こんなふうに働いています
お店は無休営業ですが、スタッフは週休2日で働いています。私は平日8時~17時勤務で、鎌倉のお店とWeb Shopで販売する商品の製造管理やスタッフのシフト作成などもやっています。だんだんスタッフの数が増えてきたので、スケジュール管理や社内のルールづくりなどの全体の管理業務が8年ほど前から増えてきました。
製造管理のほうは、月ごとに大枠の目標製造数があって、それを毎週月曜に7日分に落とし込んでいきます。1日に何をどれくらいつくるか、たとえばサブレは1日1800枚以下みたいな決まりがあるので、それを踏まえて数量を整理して、午後にはアトリエ長に渡します。できるだけバランス良く作れるよう配分は考えますが、日によって数が多くなってしまったときも、アトリエ長ができる範囲で前向きに対応してくれるので助かっています。製造スケジュールがまとまると、納品スケジュールが自ずと決まるので、各店舗で共有して、一週間の仕事の流れが見えるようにします。
シフト作成やイベントなどの打ち合わせ、プレス対応は随時です。『romi-unie JOURNAL』や包材などの制作物にも関わるようになったので、あっという間に1週間が過ぎます。
romi-unieに入るまで
大学では管理栄養士の勉強をしていました。就職先も決まって、あとは卒業だけという時期に、当時アルバイトをしていたお店の店長さんが、romi-unieの研修制度のことを本で知って教えてくださったのが始まりです。応募には推薦状が必要で、それも店長さんが書いてくださいました。この時、アトリエで週3日ほどジャムの瓶を洗ったり、簡単な仕込みのお手伝いをしました。
中に入ってみると店がやたらとなんでもおしゃれで(笑)。従業員しか使わないトイレの扉まで可愛いくて、「こんな職場があるんだー」とワクワクしました。アトリエで作ったものがガラスを隔てたすぐ向こうで売られていて、瓶を洗うところからジャムが買われるところまですべて見えるところも、まとまっていてわかりやすいし、楽しいなと思いながら働いていました。
並行して就職する予定の会社が経営する飲食店でも研修をしていたのですが、仕事が終わるのも夜遅く、社員さんがヘトヘトになっていて、働く環境にものすごく差を感じてしまったんです。ゆくゆくは商品やメニュー開発ができるという話にはなっているけれど、そこまで行けるのか、不安を感じて入社するのをやめました。ろみさんに4月から働けないか相談をしたら、新卒はとっていないので、どこかで経験を積んでまた戻ってきてくださいと断られて、別の料理教室の求人に応募しました。最終まで受かったので報告に行くと、「そこに行くならうちに入ったほうがいい」と急遽入れることになったんです。まさかでしたが、運がよかったと思います。
転機はお菓子教室のアシスタント
販売の仕事を4年続けたころ、「このままここにいて大丈夫なのか」という漠然とした不安におそわれました。今では「29歳の気の迷い」と社内でも笑いながら言っていますが、私は早めの27歳で迷いの時期がやってきました。次は管理栄養士の資格を生かしてもっと安定した仕事に就くか、いろいろ悩んで一周した結果、やっぱり好きなことや魅力のある仕事を優先しようと思い直しました。romi-unieでやりたいこともまだあったので、やりたいことがなくなるまで続けよう、と。ちょうど教室のアシスタントを募集する話が出たころで、募集前にやってみたいと手を上げました。
私は製菓の学校に通った経験がなかったので、応募資格としては対象外でした。でも「フランス菓子の基礎を勉強しながらだったらOK」とろみさんに言ってもらって、アシスタント業務に移ることができました。当時、一緒にアシスタントをしていたスタッフが「ル・コルドン・ブルー」の卒業生で「わたしが教えるから一緒にやろう」と言ってくれたのも運が味方してくれたのかなと思います。仕事終わりにアトリエを使わせてもらって、基礎をさらいながら2年ほどアシスタントをやりました。
当時の教室アシスタントは、週5日のうち3日は教室で、2日は製造だったのでアトリエで仕込みやオーブン前の仕事も経験しました。実は、ここで製造に自信がなくなったんです。仕込みは好きでうまくやれたと思うんですが、焼きのセンスがない。サブレも1000枚以上焼くので、正確さに加えて運動神経が必要だとつくづく感じて。製造はその両方ができる人たちでまわっていたので、恐縮してしまいました。そのとき、出来上がりまでの流れや、作る人の気持ちがわかったことは、今の製造管理の仕事にとても役立っているので、あの時、勇気を出して手を上げてよかったと思っています。
何年かに1度、1年生になる
これまでいろんな部署でお菓子に携わってきて、お菓子屋さんにはいろんな仕事があるということがだんだんわかってきました。私も21歳のときには思ってもいないような仕事を今しています。はじめは販売から始まって、次に教室のアシスタント、製造、産休明けには店の立ち上げ、店長、そして今年からは広報や印刷物の仕事と、振り返ると何年かに1度は1年生になって、イチから学んでいる感じもありますね。変化のある働き方のほうが飽きずに続けられるので、性格的にも合っていたんだと思います。
逆に毎日、淡々とルーティーンをこなすほうがストレスがなくていいという人にはそういう働き方ができる場所もあります。規模が大きくなったからこそ、いろんなポジションがあって、それぞれの人に合った柔軟な受け皿があるんですね。淡々とした働き方がいいという人も、働くうちにやりたいことや興味のあることが出てきて、それが社内で実現できるポジションがあるなら、努力してそこに行くこともできます。そこは自分次第だと思います。
今は8時間働く間は子どもを保育園に入れるので、7時に家を出て、6時に家に帰ってくる、みたいな流れになりました。そして、1日の終わりにはぜったいにビールは飲みたい。9時には子どもと一緒に寝て、5時半に起きるので、睡眠はしっかりとれています。睡眠不足がいちばんストレスを感じるかもしれません。スタッフから相談を受けて聞き役になることも多いので、毎日気持ちを切り替える意味でも睡眠は大切にしています。
育休のこと、もっと詳しく教えてください
2016年から17年にかけて産休をとりました。10月に出産して、5月に復帰してすぐ業態開発の担当になって、「ショコラテ ロミ・ユニ」の準備に取り掛かりました。はじめの半年は1日4時間の時短勤務だったので綱渡りの部分もありましたが、もうひとりの産休明けのスタッフとWeb Shopのスタッフと一緒に店の立ち上げをやって、5カ月後の10月にオープンして店長になりました。そのあとは子どもが3歳になるまで6時間勤務になって、2年前から通常の勤務時間に戻りました。今年は子どもが生まれてから初めて、泊まりの出張にも行けるようになりました。コロナが完全に収束する頃には、仕事でいろんな所に行けるようになるといいなぁ、と思っています。