人について 12.Romi-Unie Confiture 焼菓子アトリエ いくこちゃん

人について 12.Romi-Unie Confiture 焼菓子アトリエ いくこちゃん

第12回目はRomi-Unie Confiture 焼き菓子アトリエスタッフ いくこちゃんついてお届けします。

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いくこちゃんとは

Romi-Unie Confitureの焼菓子アトリエ勤務。専門学校で製菓を2年学び、卒業後は都内に複数の店舗を持つお菓子屋さんの工房勤務に。生菓子、焼き菓子を中心に、アイスクリームやパン部門なども経験。ハードな9年間を過ごし、退社後の2年間は抜け殻状態となりましたが、クリスマス期間だけはお菓子屋さんでアルバイトを続行。

完全復帰してからは、個人店のお菓子屋さんで10年働き、2016年2月29日にromi-unieに入社。現在は教育係も担当しているベテラン菓子職人です。

過酷なことは覚悟のうえで、お菓子の道へ

母親がおやつを手づくりしてくれる家だったので、お菓子は家でつくるものという感覚で育ちました。自分でつくるようになったのは、母から「そろそろ自分でやってみたら」とすすめられたのがきっかけで、小学校2、3年生のときでした。

当時は、牛乳と混ぜてタルト生地に流して焼くだけみたいな、お菓子キットがたくさんあって、スーパーに行くといつも悩みながら選んでいました。1980年代初めのころです。同じ頃、家にオーブンレンジがやってきて、それを使いたくてお菓子をよくつくるようになりました。オーブンレンジが自分のおもちゃみたいな感じでした。

 

アトリエ

本もあまり読まないし漢字も読めないのに、なぜかお菓子の本だけは読めるという学校生活を送っていたので、進路もお菓子か料理の道に進もうと決めていました。専門学校の体験入学に行って、フライパンを片手で持たされたとき、みんなは持てたのに自分だけ持てなくて、料理は無理かなと思って、お菓子の道に進むことにしました。

専門学校の先生方は、お店を持っているパティシエの方がほとんどで、授業を受けていると、この業界が甘くないことはなんとなく感じました。

きっと泣くようなこともいっぱいあるんだろうなと想像できたので、就職する頃には、人間関係では絶対に辞めないという覚悟もできていました。せっかく学校に通わせてもらったのに、そんなことで辞めては親に申し訳ないですからね。

 

アトリエ

現場に入ってみると、作業のスピード感はまったく違うし、終わらなければ次の日の商品の朝出しまでそのまま仕事が続くという壮絶な環境が待っていました。趣味と仕事では180度違う世界です。それでも、お客さんからは見えないお菓子の裏側にいられることには、とてもワクワクしていて、女の人も男の人も関係なく、がっつり仕事ができるところにはやりがいを感じていました。

 

アトリエ

最初の店を辞める直前は、忙しさが特に激しかったころです。ほぼ寝ずに、1週間仕事を続けていたら、朝起きれなくなってしまい、ドクターストップがかかりました。自分でも、こういう働き方はおかしいなとようやく感じ始めて、そう思ったらふと何かが抜けて、いったん辞めてみようと退職しました。

しばらく抜け殻のようになって、でも何かをつくっていたくて、家にあった布とミシンで、手のこんだカバーをいっぱいつくったりしました。そんな時期が2年ほど続いたんですが、その間も、なぜかクリスマスシーズンが近づくとお菓子屋さんで働いているんです(笑)。クリスマスは自分の出番のような気がして、じっとしていられなかったんでしょうね。

2軒目は知り合いの紹介で個人店のお菓子屋さんに入りました。前の店と規模は違いましたが、働き方はあまり変わらず、残業もふつうでしたし、有給をとるなんて考えたこともない、そんな10年を過ごしました。

入ってから好きになればいい

ロミユニ コンフィチュール

お菓子の世界はキラキラと華やかで、憧れの店で働きたいと、職場を探す人も多いですよね。わたしは職人としてお菓子をつくり続けられそうなところで、家から通いやすい場所を基準にして、働く店を決めていました。お店のことは入ってから好きになればいい、そう思ってました。

憧れの店が必ずしも職場としてベストとは限らないですし、仕事をやっていくうちに興味が出て、そこのお菓子が好きになっていくというプロセスのほうが長く続くと思ったんです。

 

ロミユニ コンフィチュール

romi-unieも自宅から通える鎌倉で働きたいと思って見つけた求人でした。お店に行ったことも、お菓子やジャムを買って食べたこともありませんでしたが、ろみさんの存在は雑誌で読んだり、知り合いが学芸大学の「Maison romi-unie」のすぐそばで当時、お店をやっていたこともあって、勝手にご縁を感じて応募しました。

レモンクッキー

romi-unieのお菓子を食べたのは、面接の日、その場で採用が決まったので、帰りにサブレを買って帰ったのが最初です。ふつうにシンプルで素朴なお菓子だな、という印象でした。

こういう仕事をしながら、わたしはお菓子屋さん巡りをほとんどしてきませんでした。おいしいと評判の有名なお菓子を食べても、小さいとき家でつくっていたお菓子のほうがおいしいと感じることが多くて、心にあまり残らなかったんです。

ろみさんのジャムやお菓子は「おうちの味」がコンセプトなので、その点ではすっと入るところはあったかもしれません。

 

さくらクッキー

romi-unieに入って好きになったお菓子は「サクラ・クッキー」です。さくら餅は好きなんですが、さくらの香りをあえて付けたお菓子はおいしいと思ったことがなかったので、サクラ・クッキーを食べたときは、本当においしくて驚きました。

さくらの花びらが入った生地に、さくらのリキュールで香りをつけたアイシングを塗っています。淡いピンクがかわいくて、つくっていても楽しいですね。シーズンには必ず買って、人にもプレゼントしています。

時間をかけて、働きやすい環境を形にしていく

ロミユニ コンフィチュール

女性ばかりの職場はここが初めてです。応募するとき、一瞬大丈夫かなと思ったのですが、入ってみると、違う部署の人も気さくに話しかけてくれて、みんなが仲良く協力的で、意外に楽しいことに気づきました。そして5時きっかりに仕事が終わる。こんな職場が本当にあるんだ! とビックリです。5時に終わらせるため、みんなでワーッと集中して作業を進めていく感じも新鮮でした。

アニョー

新しい職場に入ったときは、自分がまずは会社の色に染まってみるという謙虚さが大事ですね。店のやり方を一度すべて吸収して、自分のものにしてからでないと、本当に合う合わないは判断できないと思います。ちょっと違うから私には合わない、と辞めていると、いつまでも店を転々とすることになる。若い人も経験者も、そこは同じかなと思います。

 

レモンケーキ

わたしはromi-unieに入る前に、19年の経験があったので、新しい環境に自分を合わせつつ、作業のなかにあまり意味のない工程があると気づけば、自分の引き出しから、別のやり方を提案することもありました。でもなかなか受け入れてもらえず、折れそうな場面はいくつもありました。

レモンケーキ

それでも合わせていくうちに、よさも見えてくるし、当初受け入れられなかった提案も、途中で聞き入れてくれる人が現れて、改善されてきました。だから、まずは染まってみる、その上で諦めない、逃げないことは大事だなと思っています。ここ数年は、理想的な環境で働けているなと感じています。

教育係として

アトリエ

いま教育係を担当しているのですが、同じように教えても、できる人とできない人がいて、伝え方の難しさを感じているところです。

先日、社内研修でろみさんのジャムレッスンを受けさせてもらったのですが、とても勉強になりました。ろみさんの説明は、人に興味を持たせて、心にしっかりと残る。だから教わったほうも覚えていられるんです。自分の教え方はどうだったか、と振り返るよい機会になりました。これからアトリエで活かしていきたいと思います。

レモンケーキ

週休2日が確保されているだけでなく、有給をとらないと、ちゃんととるよう教えてくれる職場は今までなかったので、ここに入って、本当に人間らしい生活ができていると感じています。高齢の両親と暮らしているので、病院にも一緒に付き添ってあげられますし、長期休暇のときは、姉のいる北海道へ行ってリフレッシュする時間も持てるようになりました。

30年近く働いてきましたが、ずっとお菓子をつくっていたい、という気持ちはいまも変わらないですね。でも人生にはいろんなステージが待っていて、続けたくてもできないときがいつかやってきます。だからこそ、いまのうちに思う存分お菓子をつくるぞ、という意気込みで毎日働いています。この年齢になっても、そんな気持ちで働ける場所があるということを、たくさんの方に知っていただきたいですね。