第15回目は、Maison romi-unieのアトリエスタッフまゆちゃんについてお届けいたします。。
romi-unieにはどんな仕事があって、どんなスタッフがどんな思いで働いているのか、お店の裏側にあるスタッフと働き方のお話です。romi-unieはほぼ100%女子という会社でもあるので、仕事を始めたばかりのスタッフからベテランまでいろんな立場での働き方もご紹介できたらと思っています。
まゆちゃんとは
東京「Maison romi-unieアトリエ八雲」製造スタッフ。愛知県出身。高校を卒業後、「エコール辻東京」で製菓とパンを1年学び、フランス校へ留学。2019年に新卒でromi-unieに入社しました。鎌倉のアトリエでジャム、焼き菓子、チョコレートなどすべての製造部門を経験し、2023年から東京のアトリエ勤務に。毎冬、東京で開催されるチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」のために、貯金をするほどのチョコ好き。趣味は旅行、御朱印集め、ディズニー。
人生初の厨房体験は、フランスの小さな町のお菓子屋さん
小学生のころバレンタインデーの友チョコをつくるのが楽しくて、それを友達に褒めてもらえたことが、なおうれしくて、なんとなく、こっちの道に進むのかな、と思っていました。でも、小中学生のころ、お菓子をつくるのは年に数えるほどで、頻繁につくるようになったのは高校生になってからです。生活文化科という衣食住を学ぶ学科に進んで、お菓子づくりの好きなクラスメイトが周りに増え、ケーキの交換会や、誕生日ケーキをよくつくりました。学校が推奨するコンテストにも参加していました。
卒業後は、東京の「エコール辻東京」でお菓子とパンを学びました。1年目は東京校で、2年目の10月からはフランス校へ。リヨンの小さな村で寮生活をしながら、半分は学校で実習、もう半分は研修生として地元のお菓子屋さんで働きながら経験を積みました。
フランス校の授業はいつも根(こん)を詰めている感じで、まったく余裕がなかったですね。現地校の先生はフランス語で授業をされるので、最初は日本人の先生が通訳として付いてくださるのですが、途中からそれがなくなるんです。レシピも同様で、来たばかりのころは、翻訳付きですが、途中からなくなる。後半は授業に追いつくのに毎日、必死でした。
お菓子屋さんでの研修も、厨房に入ること自体、人生初のことなので、わからないことだらけ。単語がわからない、そもそも聞きとれないにはじまり、道具の名前も学校で教わる呼び方と現場では違うものがあったり、頭の中はいつも「?」マークでいっぱいの状態でした。
フランス留学のあいだはずっと、この世界で自分は本当にやっていけるのだろうか……と焦りと不安の毎日でした。
過酷な状況ではありましたが、現地の研修で刺激を受けたこともたくさんありました。子どもの誕生日を祝うバースデーケーキが、「ウエディングケーキですか?」ていうくらい大きかったり、キャラクターをデザインしたケーキも素早くきれいに職人さんがデコレーションを仕上げていく様子は、毎回、魔法のようだなと思って見ていました。
わたしが研修に入った町のお菓子屋さんは、地域の甘いものを一手に引き受けている感じで、年中行事でつくる伝統的なお菓子も、日々のおやつも、子どもたちが喜ぶキャラクターケーキも、すべてパティシエの仕事。暮らしに密着した町のお菓子屋さんの空気感や、職人さんの仕事ぶりを直に感じることができたのは、とても貴重な経験でした。
焼菓子とチョコレートで仕事探し
帰国して就職先を決めるとき、焼菓子とチョコレートの仕事がしたいと思うようになっていたので、この2つに集中できそうなお店を探していたときに、romi-unieの求人を見つけました。わたしが受けた年から新卒採用がちょうど始まって、未経験でしたがタイミングよく入ることができました。
入社してからは、鎌倉のジャムアトリエを皮切りに、いろんなセクションを回らせてもらいました。最初は1年で回り終える予定でしたが、働き始めて、1、2カ月でコロナが流行り始めて、店全体がイレギュラーな体制をとらざるを得なかったこともあって、2年ほどかけて、ジャム、サブレ、ケイク、スコーン、チョコレートなど、製造に関わる部門をすべて経験しました。入る前に研修があるというお話は聞いていたのですが、想像していた以上に、いろんなところを回らせてもらえたと思います。
3年目の春には、鎌倉の焼きアトリエ配属になり、1年を通して同じセクションで働きました。その後、異動でいまの八雲のアトリエ勤務になって、まだ3カ月です。
鎌倉の焼きアトリエで1年働いていたときに感じたのは、助け合いの精神がある職場だということですね。たとえば、自分たちの仕事が早く上がれそうなときは、みんなでジャムやパッケージなど、他の部署の仕事を手伝う空気が自然にあるんです。
焼きアトリエに配属されたばかりの頃は、余裕がなくて、自分のことで手一杯でしたが、ある程度慣れて周りを見る余裕ができたとき、自分の作業も、先輩が先を読んで手助けしてくださっていたことに気づきました。言葉での指導ももちろんありますが、先輩方の動きから学ぶことがとても多く、自分も同じことができるよう、もっと成長が必要だと感じています。
鎌倉から八雲のアトリエへ移って気づけたこと
アトリエの仕事は、「仕込み」、「サブレ生地ののし」、「ケイク」、「オーブン(焼き)」の計4パートに分かれていて、担当は毎日変わります。最初は先輩についてもらって八雲のお菓子づくりをイチから覚える必要がありました。
鎌倉とは気候も機材も違うので、同じ感覚でやっていると、うまく行かないことがよくあるんです。バターの柔らかさひとつとっても、向こうではOKでもこっちではうまく作業が進まないことがあったり、オーブンのクセも違います。ちょっとしたズレが積み重なると失敗につながるので、毎日、気は抜けません。
環境が変わったことで、自分にはできると思っていたことができなかったり、わかっているようでわかっていなかったことが再確認できたのは、とてもよかったと思っています。八雲に来て、違う条件でも即座に判断して、同じクオリティのお菓子をつくれるプロフェッショナルを目指そうという目標が生まれました。
この先やってみたいのは、チョコレートです。研修で体験してみて、もっとつくってみたくなりました。romi-unieではチョコレートづくりは寒い季節だけなので、できる期間は限られますが、作業の難しいバレンタインのボンボンなど、少しずつ経験を重ねていけたらと思っています。クリスマスのザッハトルテやレーズンサンドのチョコレートがけなど、チョコレートを使ったお菓子はどれも人気ですね。わたしも、バレンタインからホワイトデーに登場するホワイトチョコの板を重ねたブラウニーが、個人的にとても好きです。
焼菓子とチョコレートがやりたくてromi-unieに入りましたが、せっかくフランスで生菓子も勉強したんだから、そっちのスキルも伸ばせる仕事をすべきか、正直迷った時期もありました。でも、自分の場合は、広げすぎると中途半端になって、何も身につかないことのほうが逆に不安だったので、やるなら全部学びきって、自分のものにしてから次を考えようという心境にだんだん変わってきました。
仕事のモチベーションを上げてくれるもの
ほかにも働き始めてから気づいたことはいろいろあります。意外だったのが、自分たちのつくったお菓子が、かわいいパッケージで店頭に並べられると、仕事のモチベーションアップにつながるということでした。自分たちの手を離れたあと、こんなにかわいくしてくれるんだ、と思うととてもつくり甲斐があるんです。友達にもつい、自慢したくなってしまいます(笑)。
仕事の終了時間や休日がしっかり確保されているところもモチベーションアップとしては大きいですね。あと、女性だけの職場に入ってみて思うのは、女性同士だからこそわかることがいろいろあって、それが、働きやすさにもつながっていると感じています。
好きなことは趣味にとっておいて仕事にはしないという人もいますが、わたしは好きなことを仕事にして、よかったと思っています。こう言えるのも、お菓子を好きでい続けられる働き方や環境が、romi-unieにあるからかもしれません。次回のサロン・デュ・ショコラも、友達にストップをかけられないよう、買いすぎに気をつけます!